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文具メーカーコクヨのオフィス「THE CAMPUS」が「働き方の実験場」であるワケとは

2022/10/28 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

コロナ下のオフィス不要論に挑む コクヨの実験場「THE CAMPUS」 – 日経クロストレンド連載

大手文具・家具メーカー、コクヨのDXデザイン室長の三宅健介氏と石角友愛氏の対談の後編。前編では同社が進めてきた「デジタルエクスペリエンス」の概要、社内で協力を得るための取り組みなどについて聞いた。後編では品川のオフィス「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」の話から、コクヨが進める新しいビジネスについて議論した。(対談は2022年9月13日)

コクヨが品川のオフィスをリニューアルして構築した働き方の実験場「THE CAMPUS」

▼前編はこちら
スマホで勉強する学生たち 文具の老舗コクヨが挑むデジタル変革

石角友愛氏(以下、石角) 2021年2月に、品川のオフィスをリニューアルして「THE CAMPUS」としてオープンされています。「働き方の実験場」ということですが、詳しく聞かせてください。

三宅健介氏(以下、三宅) THE CAMPUSでは、自分たちが理想と考えるオフィスを実際につくってみて、そこで働く姿をお客さまに見ていただいています。そしてフィードバックをいただき、改善をしていきます。新型コロナウイルス禍で進んだデジタルを活用した働き方もそこで試しています。当社が大事にしている「実験カルチャー」の現場ともいえると思います。

石角 デジタルも積極的に活用されているそうですね。フロアに埋め込んだビーコン(電波受発信器)と社員が持ち歩くスマートフォンから、社員がいつどこにいるかを1分単位で測定、AI(人工知能)カメラも併用して、オフィスの利用状況についてデータを収集して新しいサービスモデルの開発に生かしていると聞いています。

THE CAMPUSでは人流をデータ化し、「人が集まりやすい場所」などを把握している

三宅 ええ。オフィスの中で人の動きをデータ化すれば、「あそこは人がよく集まっている」「あの場所は想定とは違った使われ方をしている」といったことが把握できます。これまで企業のオフィスというと、“つくって終わり”となるケースが多かった。ですが実際の使用状況が分かれば、それに合わせて改修を加えていくことも可能となります。

石角 オフィスの改修というと、パーティションを動かすといったことでしょうか?

三宅 そうですね。あと最近は「集中する場所」「コミュニケーションする場所」「リラックスする場所」といったゾーニングをすることがオフィスデザインのトレンドになっています。ただそれぞれのゾーンのベストバランスは、その企業での働き方やビジネスの進め方によって違う。実際にどう使われているかを把握できれば、その比率を変えるべきか分かるはずです。データによってオフィスの問題点を見える化することで、必要に応じてパーティションを移動させたり家具の配置を変えたりして改善が進められます。

石角 まさにオフィス自体が実験の場なのですね。THE CAMPUSは一般の方も入れるのですか?

三宅 一部エリアを一般の方に開放しています。1階に子どもがコクヨの文具や絵本で遊べるスペースや、オフィス家具の体験コーナーがあり、コクヨ商品の販売もしていて、社員がお客さまの様子を直接見られるいい機会になっています。AR(拡張現実)を使った商品のPRなど、アイデアを試す場所としても活用しているんですよ。

石角 THE CAMPUSは社員の行動データを集めるとともに、お客さまのデータを集める場所にもなっているのですね。

社員から好評「社長のおごり自販機」

石角 ほかにTHE CAMPUSの特徴はありますか?

「社長のおごり自販機」は、社員2人で社員証をかざすと1本ずつ無料の飲み物が出てくる

三宅 THE CAMPUSは、例えば集中して作業したいときに使う「捗(はかど)る」フロアや、チームでの議論や交流の場として活用する「集う」フロアなど、用途ごとにコンセプトが設けられています。このコンセプトが生まれた背景は、やはり新型コロナウイルス感染症流行の影響でした。コロナ禍でテレワークが浸透したことにより、「そもそもオフィスに来る意味があるのか」という議論がなされるようになりました。ただ経営者側には、フェース・トゥ・フェースで話をしなければ分からないことがあり、オフィスに来なければ情報も集まりにくいという思いもあります。そこで目的別にフロアを分ければ、社員もその目的に合わせてオフィスに来やすくなるのではないかと考えました。

石角 「今日は集中したい」と思ったら、家ではなくあえて会社に行くという選択肢をつくったということですね。

三宅 そうなんです。とはいえ、ただオフィスに来ただけでは、仕事はできても社員間の交流は生まれにくい。そこで交流を図る取り組みも進めました。例えば、THE CAMPUSにオフィスを引っ越した際には、役員フロアで引っ越しパーティーを開催し、社長が直接社員に引っ越しそばを振る舞いました。サントリーさんのサービス「社長のおごり自販機」も社員からは好評です。これは社員が2人で自販機に社員証をかざすと、それぞれに1本ずつ無料で飲み物が出てくるというものです。代金は会社の福利厚生費として負担されます。

また、敷地内で「Infarm(インファーム)」という屋内栽培システムも導入して、社員同士が取れたての新鮮野菜を一緒に楽しめる取り組みなどもやっているんですよ。こういったちょっとしたきっかけで社員間に会話が生まれ、インフォーマルなコミュニケーションから新しいアイデアが生まれると期待しています。

屋内栽培システムの「Infarm」

「今後は出社の目的を明確に社員へ伝えることが大事になる」と話すAIビジネスデザイナーの石角友愛氏

石角 興味深いですね。米国では米アップルが社員にオフィスへ戻ってくるように呼びかけていて、すでに多くの社員はオフィスに出社しています。ただ2年間テレワークを続け、その間に売り上げが伸びたこともあって「テレワークでいいのではないか」とオフィス出社に不満を持っている社員も多いそうです。

米国のIT企業というと、テレワークの活用が円滑にいっていると思われがちですが、実はどの会社もまだ正解は見いだせていません。

ハーバードビジネススクールにこの分野を専門で研究されている教授がいるのですが、社員は出勤を強制されると反発するものの、「コラボレーションが有効な仕事なので、オフィスに来てください」と伝えると、素直に出勤するという研究結果があるそうです。オフィスに出社を望むのであれば、出社の目的を明確にして、それを社員に伝えることが今後大事になってくるのかなと考えています。

三宅 なるほど。THE CAMPUSにおいて、目的を明確にして社員に出社を求めるとどのような反応があるのか、実際にやってみて、その様子をお客さまに見てもらったり、社内の声を知ってもらったりするのもいいかもしれませんね。

センシング(感知機能)を活用して、オフィス内の会話の盛り上がりを調べる実験も行っているのですが、こういったファクトを集め、データを示して説得力を持たせるところは今後も意識していきたいですね。

石角 以前、シェアオフィスの「WeWork(ウィーワーク)」を利用していたことがあるのですが、オープンイノベーションを掲げ、ランチタイムのイベントやアプリなどを通じて、利用者同士のコミュニケーションを促進しようとする取り組みがありました。とはいえ、みなさん仕事を目的に通っていることもあり、なかなかイノベーションにつなげるのは難しいと感じましたね。

今、オフィスはシェアしたり有効活用したりする時代です。コクヨがテクノロジーを生かしてイノベーションを促してくれるのではないかと、楽しみに思います。

老舗企業のDXは焦らず「じわじわ」

石角 グローバル戦略においては、DXデザイン室はどのように関わっているのですか?

三宅 日本の文具はすごくニッチですが、ファンが多い。今後もっとお客さまに知ってもらうためには、タッチポイントの設計が大事です。商品の価値に気づき、使ってみて良さを実感し、継続して購入する。この一連の購買体験をうまくつくり上げることができれば、グローバルでもより広がっていくのではないかと考えています。マーケティングは、コクヨというブランド全体で考えていかなければならない部分になりますので、DXデザイン室としては、広報など他のチームとも協力してそこに貢献していきたいですね。

石角 質の良い商品はあるので、あとはどう集客していくか。そのマーケティングの部分に、データがますます生きてきそうですね。では最後に、コクヨのように伝統ある製造業で、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関心のある企業に向けて、アドバイスがあればお願いします。

三宅 コクヨでDXを進めていて感じるのですが、当社のように長い歴史を持つ会社は、拙速に変革を進めるとうまくいかない傾向があります。想像しているよりももっと長く、時間をかけてじわじわと変えていくことが大事なのではないでしょうか。

既存の事業部にも積極的に声をかけて巻き込んで、少しずつ成功事例を積み上げていき、目指す場所に向かって焦らずじっくりいく。DXは何かツールを導入してデジタル化するのではなく、お客さまを起点にして、組織内で働く人たちの考え方をデジタルへと変えていくことだと私は思っています。

石角 経営層がDXを焦らないためにも、小さな成功事例を重ねていく、クイックウィンはすごく大事なキーワードですね。とても勉強になりました。本日はありがとうございました。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00024/

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パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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